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七 - 8

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「そのはいは感投詞か副詞か、どっちだ」

「どっちですか、そんな馬鹿気た事はどうでもいいじゃありませんか」

「いいものか、これが現に国語家の頭脳を支配している大問題だ」

「あらまあ、猫の鳴き声がですか、いやな事ねえ。だって、猫の鳴き声は日本語じゃあないじゃありませんか」

「それだからさ。それがむずかしい問題なんだよ。比較研究と云うんだ」

「そう」と細君は利口だから、こんな馬鹿な問題には関係しない。「それで、どっちだか分ったんですか」

「重要な問題だからそう急には分らんさ」と例の肴(さかな)をむしゃむしゃ食う。ついでにその隣にある豚と芋(いも)のにころばしを食う。「これは豚だな」「ええ豚でござんす」「ふん」と大軽蔑(だいけいべつ)の調子をもって飲み込んだ。「酒をもう一杯飲もう」と杯(さかずき)を出す。

「今夜はなかなかあがるのね。もう大分(だいぶ)赤くなっていらっしゃいますよ」

「飲むとも――御前世界で一番長い字を知ってるか」

「ええ、前(さき)の関白太政大臣でしょう」

「それは名前だ。長い字を知ってるか」

「字って横文字ですか」

「うん」

「知らないわ、――御酒はもういいでしょう、これで御飯になさいな、ねえ」

「いや、まだ飲む。一番長い字を教えてやろうか」

「ええ。そうしたら御飯ですよ」

「Archaiomelesidonophrunicherata と云う字だ」

「出鱈目(でたらめ)でしょう」

「出鱈目なものか、希臘語(ギリシャご)だ」

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